大場先生を囲む会に出席された皆様へのお礼

教授退職&研究室創立32周年記念の集いに出席された皆様へのお礼

 皆様、8月11日には、猛暑の中、ご多忙の中、あるいはお盆休みの時間を割いて、私の退職および当研究室創立32周年記念の同窓生の集いにご出席下さり、まことにありがとうございました。
 会場で、ご参集頂いた70名近くの同窓生(OB&OG)の皆さんの懐かしいお顔を拝見し、私が関大で過ごした32年の歳月の長さを改めて実感いたしました。
 私が1980年に関大着任と同時に当研究室を立ち上げて以来32年間にわたり流体力学、レーザー計測、バイオメカニクス、生体医工学分野の研究教育に携わり、その間、当研究室より10名の博士号取得者、そのうち課程博士、論文博士がそれぞれ5名、約200名の修士課程修了者、約800名の学部卒業者を世に送り出し、その方々が当日ご出席の皆様を含めて各々の分野で技術者、研究者、大学・高専教員、経営者として元気に活躍されていることは私の誇りであり、大いなる喜びです。
 その中から最古参や何かの第1号という特性に着目しますと、当研究室の第1期生である桜井篤氏(現・藍野大学教授)、大学院修士課程修了第2期生の津田宜久氏、大学院課程博士第1号のPham Hong Son氏(現在、ベトナム最大級の食品会社の経営者、当日はベトナムのホーチミン市から駆け付けて出席)、論文博士第1号の田中久仁雄氏、唯一の女性博士である小柳雅子さんが出席されていました。
 集いでは出席されたOB&OGの方々全員に自己紹介を兼ねた短いスピーチを行なって頂くべく会を進行させましたが、残念ながら時間が足りず、約6割の人で終わったのは残念でした。次の機会があれば、是非とも残りの方々のスピーチをお聞きしたいと願っています。
 会の冒頭に関大校友会の寺内俊太郎・会長に励ましのご挨拶を頂いたことを記し、感謝申し上げます。

 さて、次にこの紙面をお借りして、私が考えて来たこと、皆様に伝えたいメッセージを述べることをお許し下さい。当日の私の挨拶の後半部分をほとんどそのまま再掲致します。
 当流体バイオ研において私自身は学部卒業研究、修士論文研究の指導を通して「学生には自分の持っている一番良いものを与えよ!」をモットーに皆様の教育と研究指導に精一杯取り組んで来たつもりです。しかし、皆様が当研究室で過ごした1年、3年あるいは6年が、どれほど有意義であったのか(?)、それぞれの分野で専門家として生きて行く上での基本的な考え方にどれほど良い影響を与えることができたのか(?)、専門基礎知識、基本的スキルの習得にどれほど役立ったのか(?)につきましては、正直に言って、自信を持って ”YES” とは言えません。この点につきましては教育研究にかけて来た私の熱意に免じて有意義性を認めて頂くしかないと思っています。
 私は、私の退職後も現職の板東教授や田地川講師および院生、配属学部生たちの努力によって当研究室が継続し、ますます発展して行くことを心より願っていますが、あらゆるまともな社会組織がそうであるように、大学の研究室もいわゆる「開放系」であり、組織を構成するメンバーが徐々に入れ替わりながらも、1つのまとまった組織体として生命を維持し、進化、発展して行くわけです。しかし、そのためには何十年あるいは百年もの長きにわたり組織の基盤であり続ける「理念」のようなものが必要です。
 私自身が永年拠り所としている主な座右の銘は、「工学とは人間の役に立つ知識と物を創る科学(Science)である。」と「進化は革命に優る。(Evolution is much better than revolution.)」です。この2つについては様々な機会に様々な場所で表明して来ました。当日の挨拶ではそれについて話しませんでしたが、代わりに出席の皆様のために資料を各1冊用意致しました。
(A4横長の透明ファイルに綴じた資料を出席のOB&OGの方々に1冊ずつ配布致しました。残部がありますので、ご希望の方は私にご連絡頂ければ、郵送致します。)
 中味は最初の紹介と挨拶のページを除いて3種類に分かれています。1番目は5つの大学の学部生に教えている「リベラルアーツ教育」の中の「科学技術と哲学」の講義資料です。その最後のページにヒトの盲点(Blind Spot)を体験するための絵を載せていますので、各自で体験して頂ければ楽しいと思います。もしこの絵の使い方が分からなければ、私か当研究室の現役の学生達に聞いて下さい。実は、すでに2つの大企業の研修の中で私自身と当研究室出身者がこの絵を使い、好評を得ています。
 2番目は3月24日に行ないました私の最終講義の時の配布資料です。最終講義にご出席頂いた方々には重複になりますが、ご容赦下さい。
 3番目は折々に書き留めたエッセイ、トピックス、巻頭言の最近10年分をまとめたものです。これらの中に私の考え方、哲学、理念のようなものを殆んど全て書き込んだつもりです。ご一読頂ければ幸いです。
 実は、この資料は、中身の編集はもちろんですが、PowerPoint slidesからのprint-out、そのカラーコピーからホッチキス留め、穴開け、ファイルの選定、購入、綴じまで全て自分一人で行なって作成したものです。単独作業で時間的制約もありましたので、手抜きしている点はご容赦下さい。
 これらのいわば瑣末な作業について私がわざわざ言及しましたのは、私自身は退職後も、考える仕事以外に簡単な手作業や事務仕事もパソコン作業も自分一人でこなす気満々であることです。皆様のような働き盛りの中堅や若い人たちとかぶらないように、皆様の仕事の邪魔をしないように、今後とも自分の年代に最も適したやり方を模索しながら教育研究に貢献できればと考えております。ご迷惑でしょうが、皆様とともにこれからも頑張りたく存じます。
 最後に、ご出席に感謝し、ご出席の皆様からの懐かしいスピーチの数々と色紙に書き込まれた数多くの心温まる寄せ書きに感謝し、皆様の今後のご健勝を祈りながら私の謝辞を終わります。
 有難うございました。

2012(H24)年9月3日
     大 場 謙 吉

連絡先:関西大学先端科学技術推進機構3階
流体・弾性膜連成現象実験室
Tel.: 06-6368-0817, または06-6368-1121 ex.6717
e-mail: v802063kansai-u.ac.jp