[ 概 要 ]
本研究室が取り組んでいる研究の概要について説明します.
地球は大気に包まれた水の惑星ですが,この地球の生物圏(Biosphere)を満たしている空気と水に代表される流体を取り扱う流体力学/流体工学は,生物・人間に最も身近な学問と言えます.流体力学は気体,液体などの流体が運動するとき,流体中の物体または流体を囲む物体にどのような力が働くか,逆に流体が力を受けるとき,どのような運動をするかを研究し,さらには流体そのものの性質を調べる学問と定義されています.
「流れ」は日常生活における水道や都市ガス,身体の中の血液循環,肺・気道内の空気の流れ,航空機・自動車・船舶等の周りの流れ,ポンプ,タービン,プロペラ―,ジェット等の流体機械・推進機械,原子炉や各種プラント装置の流路・容器内の流れ,さらには大規模な海流や大気循環に至るまであらゆるところで見ることができ,それらは全て流体力学/流体工学/流体科学/流体物理学の研究対象になっています.
バイオメカニクス(生物力学・生物工学・生体力学)は工学の考え方や手法を動物,とくに人間に応用することによって,人体やその構成器官・組織,例えば血液循環系・呼吸系・骨・筋肉・関節等の機能や構造の力学的な側面を研究したり,動物の歩行・走行,鳥・昆虫の飛行,魚鯨類の遊泳等のロコモーションのメカニズムを研究し,その成果を工学,生物学,医学,体育学の様々な分野に応用することを目指しています.
当研究室は上記の分野の中でも
- 「血液循環系・呼吸器系のバイオメカニクスと人工心臓」
- 「動物の遊泳と飛行のバイオメカニクスとバイオミメティクス」
- 「レーザーと超音波による流れの可視化法と計測法」
- 「数値流体・弾性体力学」
を主な研究テーマとしています.力学的観点から見るとこれらはどちらも「流体と弾性体,弾性膜,弾性壁との連成問題」の研究に帰着します.さらに研究に必要な新実験法,新数値解析計算法を開発するため
の研究を併せて行っています.
工学的立場からの研究手法として,動物実験よりもむしろ生体を模擬した種々のモデル実験が重要になるので,新しい計測法の開発や模擬血管・模擬血球などの生体の構成組織を力学的に模擬した実形状モデルの作製およびそれらのモデルの生体模倣性の検証が不可欠です.そのために,コンピュータ制御によるナノ・マイクロレベルの3次元立体加工機械と実験装置を取り揃えています.
また,「臨床医工情報学コンソーシアム関西」および「臨床医工学・情報学広域大学連携事業」に参画し,医学,生理学,解剖学,流体力学,弾性力学,制御工学,高分子化学などにまたがる広範かつ学際的共同研究と学部・大学院教育を国立循環器病センター,大阪大学など学術的研究機関・企業との間で行っています.